2016年6月6日 読書メモ――弟子体験記

5月28日に水戸で行われた茨城民俗学会の公演にいらしていただいたお客様で、「これを読んでから来たんですよ」と水上勉さんの『説経節を読む』を鞄の中から見せて下さった方がいらっしゃいました。
なかなか一般的ではない説経節ですが、その中で少ない資料を読んできてくださったのだなあ思ったのですが、歌舞伎や文楽などは沢山本が出ているものの、それに比べたら説経節はとても本が少ないです。でもいい本はあるのです。

その中でも印象に残ったものを、少しご紹介できたらと。
丸山静さんの『熊野考』(せりか書房)は、「小栗判官」についてとても印象深い本です。
「説経『をぐり』という作品は、たんに小栗判官、照手姫のあれこれの「物語」を「ものかたる」ところの意味するもの=言語ではなくて、小栗判官、照手姫という、荒唐無稽、奇怪至極な出来事が出現する「場」であると考えなければならない。」(175頁)
決して単純ではない複雑な構造を持つ「小栗判官」が一体何を伝えようとしているのかをテキスト(場面)の機能に忠実になおかつ熱を込めて書かれた文章は何回読んでも新しい発見があります。
特に最後の「道行き」についての考察は、15年以上『をぐり』と向き合った著者の中から出た結論であり圧巻です。

記載 弟子結城

熊野考

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