2016年3月18日 稽古――弟子体験記

演目「葛の葉」には狐のセリフが出てきますが、その時の狐の気持ちというのはどのようなものなのでしょうか? 
狐葛の葉は、石川悪右衛門に殺されそうになったところを安倍保名に助けられ、人間に化けて保名と夫婦となり子をもうけますが、その子童子丸に本当の姿を見られ信太の森に帰っていきます。
「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる 信太の森の恨み葛の葉」
という歌いだしがあまりにも有名ですが、大阪北信太の「葛葉稲荷神社」へ伺ったときは、葉の表が緑で裏が白い葛を目にしました。「恨み」を「裏見」ととる、なんて事も聞いたことがあります。
お稽古で実際語るといつも棒読み、そのくり返しを抜け出せませんが、
この演目を聞くと、人がなかなか乗り越えられないものを漠然とですが感じます。
先日、豊竹山城少掾さんの「蘆屋道満大内鑑 葛の葉子別れの段」をCDで聞きました。
重厚な語りの中に狐のセリフが入るのですが、その瞬間、鳥肌が立ちそれは気味の悪いものだったのです。
何といったらよいのか人間から感情をすべて抜いたような奇妙な感覚です。
人の心に深く残るのは、必ずしも耳に良く聞こえるものだけではないのでこの体験は衝撃でした。
それが、何を意味するのか・・・考える日々です。

記載 弟子結城

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